令和2年4月7日、政府は、新型コロナウイルス感染症緊急経済対策と補正予算案が閣議決定されました。感染拡大の早期防止と収束に加え、雇用の維持、事業の継続、国民の生活の下支えを目的としたこの政策には、108.2兆円という巨額の予算が投じられます。
さて、本項では、税制上どのような措置が実施されるのかや、中小企業等への支援に焦点を合わせ、詳しく見ていきたいと思います。
国税・地方税の税制上の措置
納税の猶予制度の特例
イベントの自粛要請や、入国制限など、新型コロナウイルスの感染拡大防止のための措置によって、収入に相当の減少があった事業者の国税・地方税及び社会保険料については、無担保かつ延滞税なしで1年間、納付が猶予されます。基本的に全ての税目が対象となり、令和2年2月1日から令和3年1月31日までに納期限が到来する国税に適用されます。その際、施行日前に納期限が到来している国税についても、遡及して適用することができます。対象には、フリーランスや、確定申告をしているパート・アルバイトも対象になります。また、黒字であっても収入減少等の要件を満たしていれば適用されます。
現行(財産の損失が生じていない場合) | 特例案 |
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欠損金の繰り戻しによる還付の特例
現在中小企業(資本金1億円以下の法人)に認められている、青色欠損金の繰戻しによる法人税等の還付制度について、資本金1億円超10億円以下の中堅企業においても適用されることになります。ただし、大規模法人(資本金の額が 10 億円を超える法人など)の 100%子会社や、100%グループ内の複数の大規模法人に発行済株式を全て保有されている法人等は除きます。また、これとは別に、災害損失⽋損⾦の繰戻しによる法⼈税額の還付を受けられる場合があります。
テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
新型コロナウイルスの影響を受けながらも設備投資を行う企業に対しては、固定資産税の特例措置の拡充・延長が行われる。具体的には、即時償却、または7%(資本金が3,000万円以下の法人は10%)の税額控除が可能です。
ただし、上限額は「中小企業投資促進税制」および「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の控除との合計で、当期の法人税の20%を限度とします。加えて、国内への投資であること、生産等設備であること、中古資産・貸付資産でない必要があります。
類型 | 生産性向上設備(現行) | 収益力強化設備(現行) | 新たな類型 |
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要件 | 生産性が旧モデル比年平均1%以上向上する設備 | 投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 | 遠隔操作、可視化、自動制御化のい ずれかに該当する設備 |
対象設備 |
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文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する控除
文化芸術・スポーツイベントの中止により、主催者が大きな損失を被っている状況を鑑みた措置です。イベントの入場料等について、観客等が払戻請求権を放棄した場合、放棄した金額が寄付金控除(所得控除・税額控除)の対象になります。
適用までの流れ
- 主催者が文化庁に申請する。
- 文化庁等が主催者に特例対象イベント証明書(仮)等を交付し、当該イベント名等を公表する。
- 払戻請求権を放棄した観客等に対し、主催者は特例対象イベント証明書(仮)のコピー、払戻請求権放棄証明書(仮)を交付する。
- 観客等は、確定申告の際に、特例対象イベント証明書(仮)のコピー、払戻請求権放棄証明書(仮)を申告書に添付する。
住宅ローン控除の適用要件の弾力化
新型コロナウイルスの影響により、住宅建設の遅延等が発生している事態への対応です。住宅ローンを借りて新築した住宅、取得した建売住宅や中古住宅、増改築等を行った住宅に対し、令和2年12月末までに入居できなかった場合でも、次の要件を満たす場合は、控除期間が13年に延長された住宅ローン控除を適用できます。
- 新型コロナウイルスの影響で、新築住宅、建売住宅、中古住宅または増改築等を行った住宅への入居が遅れた場合。
- 一定の期日(※)までに、新築、建売住宅・中古住宅の取得、増改築等に係る契約を行っている場合。
- 令和3年13月末までの間に、2.の住宅に入居している場合。
(※)一定の期日・・・新築の場合は令和2年9月末まで。建売住宅・中古住宅の取得、増改築等の場合は令和2年11月末まで。
中古住宅の取得から6ヶ月以内の入居を求める要件について
6ヶ月を超える場合でも、以下の要件を満たせば住宅ローン控除を適用できます。
- 取得後に増改築等を行った中古住宅への入居が、新型コロナウイルスの影響によって遅れた場合。
- 1.の増改築等の契約が、中古住宅取得の日から5ヵ月後まで、または特例法施行の日の2ヵ月後までに行われている場合。
- 1.の増改築等の終了後6ヵ月以内に、当該住宅に入居している場合。
消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例
新型コロナウイルスの影響により、事業者の一定期間(1ヶ月以上)における売上が、前年同期と比較して約50%以上減少した場合、税務署の承認を受けることによって、課税開始期間後であっても消費税の課税事業者を選択することができます。事業者の実情に応じた対応を可能にするため、課税事業者を選択した場合の2年間の継続適用要件、課税事業者を選択した事業者、または資本金1000万円以上の新設法人が調整対象固定資産(100万円以上の固定資産)を取得した場合等の3年間の継続適用要件は適用されません。
現行 | 特例 |
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特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税案
公的・民間の金融機関等が、新型コロナウイルスにより、経営に影響を受けた事業者に対して行う特別な貸付けに係る契約書については、印紙税が非課税になります。
中⼩・⼩規模事業者等への⽀援
持続化給付金
新型コロナウイルスの影響により、特に厳しい状況にある中小企業、中堅企業、小規模事業者、フリーランスを含む個⼈事業者等、その
他各種法⼈等について、給付金の措置が行われます。給付額は(前年の総売上(事業収⼊))−(前年同⽉⽐▲50%⽉の売上×12か⽉)で計算され、法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内の給付となります。
⽣産性⾰命推進事業
中⼩企業基盤整備機構が複数年にわたって中⼩企業の⽣産性向上を継続的に⽀援する「⽣産性⾰命推進事業」において、新型コロナウイルスに伴い、補助率または補助上限を引き上げた「特別枠」が設置されます。
補助率 | 補助上限額 | 備考 |
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ものづくり補助金 | 1/2→2/3 | 1,000万 | |
⼩規模事業者持続化補助⾦ | 2/3 | 50万→100万 | |
IT導⼊補助⾦ | 1/2→2/3 | 450万 | ハードも対象 |