「青色申告はお得らしいけれど、帳簿が難しそう」
「売上が少ないうちは、白色申告でよいのでは?」
このように迷っている個人事業主の方は少なくありません。
確定申告の色は2色ですが、どちらを選ぶかは、なかなか白黒はっきりしませんよね(笑)。
私も税理士として20年以上仕事をしていますが、特によく聞くのが「白色申告なら帳簿をつけなくてよい」という勘違いです。
現在は、白色申告でも事業の売上や経費を帳簿に記録し、帳簿や書類を保存する必要があります。
結論
今後も事業を続ける予定があり、会計ソフトなどを使って記帳できる方には、基本的に青色申告がおすすめです。
青色申告には、主に次のようなメリットがあります。
・最高65万円の青色申告特別控除
・家族への給与を必要経費にできる制度
・赤字を翌年以後に繰り越せる制度
・一定の資産を少額減価償却資産として経費にできる特例
ただし、青色申告を選ぶには、期限までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
青色申告とは
青色申告は、日々の取引を帳簿に記録し、その帳簿に基づいて正しく確定申告をする人が、税務上の特典を受けられる制度です。
青色申告を選択できるのは、原則として次の所得がある人です。
・事業所得
・不動産所得
・山林所得
会社員の副収入があるからといって、すべての人が青色申告を選べるわけではありません。
副業の内容や規模によっては雑所得になることもあるため、判断が難しい場合は専門家への個別相談が必要です。
白色申告とは
白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う申告方法です。
青色申告のような事前申請は必要ありません。また、青色申告の複式簿記と比べると、比較的簡単な方法で記帳できます。
ただし、白色申告でも記帳は必要です。
「領収書を箱に入れておけば大丈夫」というわけではありません。確定申告の時期に箱を開けて、途方に暮れる方もいらっしゃいます(笑)。
日頃から売上や経費を整理しておくことが大切です。
青色申告特別控除は3種類
青色申告特別控除には、主に次の3種類があります。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 10万円 | 簡易な方法で記帳している場合など |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告する場合など |
| 65万円 | 55万円控除の条件に加えて、e-Taxによる申告または一定の電子帳簿保存を行う場合 |
注意したいのは、65万円分の税金がそのまま安くなるわけではないことです。
所得から最高65万円を差し引いたうえで税金を計算する制度なので、実際に減る税額は、その人の所得や税率によって異なります。
青色申告の申請期限
青色申告を始めるには、原則としてその年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は、原則として事業開始日から2か月以内です。
申請期限を過ぎると、その年は青色申告を選べない可能性があります。
開業した方は、開業届だけで安心せず、青色申告の申請書も提出したか確認しておきましょう。
【比較表1 青色申告と白色申告の違い】
| 比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前申請 | 必要 | 不要 |
| 特別控除 | 最高65万円、55万円または10万円 | なし |
| 記帳方法 | 控除額に応じて複式簿記など | 簡易な記帳が可能 |
| 提出書類 | 青色申告決算書 | 収支内訳書 |
| 家族への給与 | 一定の要件で必要経費にできる | 事業専従者控除を適用 |
| 赤字の繰越し | 一定の要件で3年間繰越し可能 | 原則として青色申告のような繰越しはできない |
| 向いている人 | 継続して事業を行う人 | 申請期限を過ぎた人など |
【比較表2 家族が事業を手伝う場合】
| 比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 制度名 | 青色事業専従者給与 | 事業専従者控除 |
| 基本的な取扱い | 適正な給与を必要経費にできる | 所得から一定額を控除する |
| 事前の届出 | 原則として必要 | 専従者控除の事前届出は不要 |
| 金額 | 仕事の内容に見合った適正額 | 配偶者は最高86万円、その他の親族は1人最高50万円など |
| 注意点 | 実際の勤務と給与の支払いが必要 | 所得によって控除額が少なくなる場合がある |
【比較表3 どちらを選ぶかの目安】
| 現在の状況 | 選択の目安 |
|---|---|
| 今後も事業を続ける予定 | 青色申告を積極的に検討 |
| 会計ソフトを使用できる | 青色申告と相性がよい |
| 利益が出ている | 青色申告特別控除のメリットを受けやすい |
| 家族が本格的に働いている | 青色事業専従者給与を検討 |
| 申請期限を過ぎている | その年は白色申告、翌年から青色申告を検討 |
| 帳簿の作成に不安がある | 会計ソフトや税理士を活用 |
【図解1 青色申告と白色申告を選ぶ流れ】
個人で事業を始める
↓
青色申告の申請期限内ですか?
↓
┌───────┴───────┐
│ │
いいえ はい
│ │
↓ ↓
その年は白色申告を検討 今後も事業を続けますか?
↓
┌────┴────┐
│ │
いいえ はい
│ │
↓ ↓
事務負担を考えて 帳簿を継続して
選択 作成できますか?
↓
┌───┴───┐
│ │
はい 不安
│ │
↓ ↓
青色申告を 会計ソフトや
検討 税理士を活用
│
↓
青色申告を検討
【図解2 65万円控除までの流れ】
青色申告承認申請書を提出
↓
複式簿記で帳簿を作成
↓
貸借対照表と損益計算書を作成
↓
申告期限内に確定申告
↓
e-Taxで申告
または
一定の電子帳簿保存
↓
最高65万円の青色申告特別控除
【図解3 所得計算のイメージ】
売上
↓
必要経費を差し引く
↓
事業所得を計算
↓
┌──────────┬──────────┐
│ │ │
青色申告 白色申告
│ │
↓ ↓
青色申告特別控除 特別控除なし
を差し引く
│ │
└──────────┴──────────┘
↓
税金の計算へ
【まとめ】
青色申告と白色申告の主な違いは、税務上の特典と記帳方法です。
| 重要ポイント | 内容 |
|---|---|
| 白色申告でも記帳が必要 | 売上や経費を帳簿に記録する必要がある |
| 青色申告は特典が多い | 特別控除、赤字の繰越し、専従者給与などがある |
| 事前申請が必要 | 原則3月15日までに申請する |
| 65万円控除には条件がある | 複式簿記、期限内申告、e-Taxなどが必要 |
| 早めの準備が重要 | 申請期限を過ぎるとその年に適用できない場合がある |
継続して事業を行う方にとって、青色申告はメリットの大きい制度です。
一方で、所得の種類、事業の規模、帳簿の作成状況などによって、適用できる制度は異なります。
この記事は、2026年7月14日時点の法令および国税庁公表情報に基づいています。具体的な適用については、専門家への個別相談が必要です。
【税理士からのひとこと】
「帳簿が苦手だから白色申告にしよう」と考える方は少なくありません。
ただ、白色申告でも記帳は必要です。それなら、会計ソフトを活用して、青色申告のメリットを受ける方法もあります。
最初から完璧な帳簿を作れる人は、ほとんどいません。
「この領収書は経費になりますか?」
「会計ソフトの入力方法が分かりません」
そのような小さな質問でも大丈夫です。難しい税金の話ほど、できるだけやさしい言葉でお伝えすることを大切にしています。